「祖父の肖像」
亡くなった祖父のアトリエに残っていた、祖父のポートレイト入りの額縁に、レンズ状の透明な装飾を施したイコン。連続して均等に配置されたレンズの装飾は、反復する行為が人にもたらす超常的な力を模している。
装飾は、視覚的な見難さによって写真から多くの情報を削りとっていくが、象徴化された祖父の肖像は、精神面における「見る見られる」の関係を増幅させていく。
これらの作品はイコンでありタリスマンでもある。あらゆる宗教的儀式において信仰の対象との関係を増幅させるために、音や匂い、光やあらゆる現象を用いるように、私は反復する力で祖父との繋がりを強化させる。ウニの殻の中に祖父の写真を入れたものは、自然の中にある反復の模様を直接的に借りている。
横に添えた写真は花のひとつひとつをかつて人だったものと見立て、「“それ”はいつもあなたを見守っているが、同時にいつだってあなたを見ている。」という、超常的な存在からの視線と、見る見られるの関係を可視化した作品。花の写真は祖父が生前に撮影したもの。